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2014.07.01up

岡潔講演録(11)


「自然科学は間違っている」(4)

【3】 欧米人の知力

 この10年だけを見ても、自然科学について毎年ずいぶんの数のノーベル賞を出している。物理、化学、医学、文学、平和の5つの部門のうち3つまでが自然科学である。

 ところが自然と云うものはなく、従って自然科学と云うものはないのであるから、自然科学に関してノーベル賞を出すことは意味のないことである。何か他の意味があるなら別の名称をつけなければいけない。

 だから欧米人は自慢の理性を五感の上位に置いているのではない。理性の上位に五感を戴いている。すなわち、ほとんど犬猫の知力と同じである。これをよく見極め、今後は欧米の真似をしないようにして貰いたい。

 もちろん機械を作ったり、月に落っこちたりは出来る。しかしこれは云うに足らんことである。

(※解説3)

 ここは「ノーベル賞」についての岡の発言であるが、岡は西洋の自然科学をはじめとする諸学問には甚だ批判的である。それにはそれ相応の理由があるのだが、特にその象徴である「ノーベル賞」には誠に手厳しく、「犬猫の知力」とほとんど同質であるとまでいっている。

 これには一般人どころか科学者や知識人にも、とても着いていけるものではないだろう。しかし、その発言は終始一貫していて、別のところで岡はこうもいっている。

 「自然科学は猿も使う『生きるための知恵』と同じであって、人が自然科学を持っているということと、猿とは何ら区別のつけようがない。人は『道徳』を持っているから猿とは違うのです。価値判断を間違えてしまっている

 自然科学が花盛りの今の世相を見るにつけ、岡のいう道徳(人の道)が地に落ちてしまったことに、私は目を覆いたいばかりである。正に現在の人類は、高度な道具に溺れてしまった「狂える猿」ではないのか

 猶、「月へ落っこちる」とはどういう意味だろうか。それは岡潔講演録 (6) の「歌で読みとく日本歴史」の(14)「造化の神々」を参照されたい。

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