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 2014.08.01 up

岡潔講演録(11)


岡潔 「自然科学は間違っている」(4)の解説

「物質とこころ」より

講演日:1970年6月

 

横山 賢二

はじめに

 今回の岡の自然科学批判は第4回を数えることになるのですが、この「物質と心」は今までのものとは少し趣が異なり、「物質」の方面と「こころ」の方面の2面の関係性について言及しているのが特徴です。

 つまり、西洋がギリシャ時代から関心の強い「物質の世界」と、東洋が古代から主張する「心の世界」を1つの世界観でつなげた訳でして、これによって東西文明のお互いの位置づけが明確になってきた訳です。これは21世紀の人類にとって画期的なことだと思います。

 従いまして、今までのように自然科学の性格の検討ばかりではなく、「心の構造」の解明ということも新たに加わることになり、岡はこの「2つの心」という岡独自の仮説によって、この人類の未曾有の混迷の打開を何とか図ろうとしているのです。

 また岡としては珍しく、具体的な環境破壊の例もいくつか挙げていまして、今日の人類の危機的状況が説得力を持って語られている。

 更に加えて、自然科学の世界観にかわる新たな仏教の世界観を、科学者の立場から岡独自に、いわば西洋流の世界観に翻訳し直してくれているところも流石に真の「科学者」といいたいところです。

 岡は晩年この唯識論の世界観をベースにして、それを次第に引きのばし深化させ「心の世界」を人類に先駆けてどんどん解明していくことになるのです。

 そして、ここで「仏教の唯識というのはあまり深くはない」といっているように、この辺ですでに唯識論の深さの限界を感じはじめ、ついには仏教を突き破り2年後の1972年には、第10識「真情の世界」のあることを発見することとなるのです。この「物質とこころ」はその過渡期における作品です。

目  次(下の項目をクリックしてお読み下さい)

【 1】 物質の世紀

【 2】 刹那消滅

【 3】 欧米人の知力

【 4】 無知のこわさ

【 5】 二つの心

【 6】 目覚めた人

【 7】 人類の自滅

【 8】 学問について

【 9】 形式の世界

【 10】 自然を科学するとは

【 11】 家と人

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