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横山賢二 新聞記事


【5】教育と大脳生理

高知新聞 1992年(平成4年)5月25日(月曜日)

 大脳は四つの部分に分かれる。前頭葉、側頭葉、後頭葉、頭頂葉である。今、医学でよく分かっているのは前頭葉と側頭葉である。前頭葉は「感情、意欲、理性」、側頭葉は「記憶、計算、言語」をつかさどると言われる。ものごとの意味や味わいは前頭葉を通して初めて分かる。側頭葉は単なる計算や丸暗記である。一方、OA時代である。コンピューターはものを「記憶、計算、言語」しても、「感情、意欲、理性」はできないから、これはいくら精密とはいえ、側頭葉をただ機械化しただけのものである。多くの人はコンピューターは人の頭脳に勝ると思っているようであるが、勝るのは側頭葉の機械の精密度だけであって、前頭葉の「感情、意欲、理性」の質の高さでは決してない。

 ところで、側頭葉の特徴は記憶の量と計算の速さである。これはテレビのクイズ番組でもおなじみのように、いかに多くを知っていて、いかに速く答えるかが問題である。これはまるでゲームである。しかし、クイズ番組ではこれでもいいだろうが、最近の教育がますますこれに似てきたのは深刻な問題である。

 人の頭の使い方は、まず前頭葉で意味や内容が分かり、それに応じて側頭葉が働くのが正常である。しかし、今はその前頭葉を抜いてしまい、訳も分からずに知識を詰め込もうとする。受験競争に勝つためには側頭葉の「量と速さ」が最優先という訳だろうか。前頭葉軽視、側頭葉重視の砂をかむような教育はぜひやめてもらいたい。子供たちがかわいそうである。

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