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2014.07.01up

岡潔講演録(11)


「自然科学は間違っている」(4)

【1】 物質の世紀

 物質と云う観念がある。これに対して、心と云う言葉がある。東洋の大先達たちは昔から心が(もと)だと云い続けて来た。これに対して西洋(主としてギリシャ、欧米)は物質が基だと考えて来た。

 ところが今から100年程前、日本で云えば明治の初めから、東洋もまた西洋の云うところをもっともと思って、物質が基だと思うようになった。従って、20世紀は人類あって以来、はじめての物質の世紀である。

(※解説1)

 岡のことをいまだに世界的数学者とのみ考えている人が多いようですが、資料を読んで岡の最晩年を知っている私から見れば、岡は釈尊や孔子や老子など東洋を代表する、人類が滅亡の危機を迎えた20世紀に照準を合わせて生まれてきた人類の「大先覚者」だといっても過言ではないと思います。

 ただ、それら2000年以上前の東洋の先覚者達と違うところは、近年急速に力をつけてきた西洋文明の持つ科学性(大脳前頭葉の精密性)を、西洋の数学を学ぶことによって十分身につけているというところでして、この「物質の世紀」という言葉は、そういう人の口から出たものであることを我々は銘記しなければなりません。

 「人間の建設」というタイトルで岡と対談した小林秀雄は新刊「学生との対話」の中で、「人類の教師といわれる人はきっと現れているはずだ」という風にいっていますが、私にいわせれば「小林先生、その人は正にあなたの眼前にいたんですよ」と申し上げたいのです。

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