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2015.12.26up

岡潔講演録(17)


「1969年の質疑応答」

【13】 ガンの原因

(岡) 前頭葉なしにはガンは起こらん。これが本質的なことです。無理にこしらえることはできる。が、自然発生のガンは前頭葉を持たない動物にはない。欲界です、これは。菟道稚郎子 命も、楠父子も、明治天皇も、袈裟もガンにかかってません。で、刺激して、結局、それガンになったって、そんなことわかったとこで仕方ない。それ、つまり、木の葉がどうしたら赤うなるかって調べてるようなもんでしょう。赤色でないものを注射したら、赤くなったってわかったとこで、それ何にもならんでしょう。秋の季節というものが来るからと 知らなければ。

 いやあ、ちょっと考えてね、前頭葉のない動物にガンがあるか。猶、そんなん起こさすんなら、哺乳類以外の動物を刺激してガンを起こさすことができるか、とまで踏み込むんなら多少意味あると思う。そんなもん、起こし易いうさぎかモルモットとかばかりやってるでしょう あれはやはり、先、考えてやってみるんでなきゃ。そんなん、めくら滅法やってたら探り当てるって、そんなことありますか。頭頂葉なんかが肉体を支配するのが正しい。私はそうなってるとガンは起こらないと思います。少なくとも頭頂葉が体を支配してたら、無闇に背が伸びたり、おかしな顔つきになったり、そういうことは決して起こらない。頭頂葉が支配しないから。頭頂葉が支配しなかったら前頭葉がいろんなこといい出すんです。欲界の心がね。ここは欲界なんです。

(※解説13)

 私は医学的知識には疎いのだが強いていえば、今医学会でガンの原因は何なのか、本当にわかっているのだろうか。医学でできることは物理的にガンを切除するか、もしくはどういう医学的処置をすれば比較的ガンが小さくなるかということまでであって、これではガンの原因がわかったことにはならないのではないかと思うのである。

 つまり医学は目に見えるガンという物理現象を、多少改善の方向へ向けさせることが限度であって、これでは場当り的な対処療法といわれても仕方がないのである。

 岡はそのガンの原因は何かを正面に据え、その原因は「心の世界」にあり、人だけに非常に発達した大脳前頭葉に宿る「自我意識」であるというのである。考えてみればそれもそのはずで、下等な魚類や爬虫類には自然発生のガンがあるなどとは、私は聞いたことも見たこともないのである。

 今日流行の脳科学では、前頭葉には自己本位の「自我意識」が宿り、頭頂葉には「無私の心」が宿っているなどという構想は思いもよらないのであるが、岡はこの1969年にその事実を発見するに至って初めて「ガンの原因は前頭葉の自我意識にある」と言いだすのである。

 ただ、このガンの原因については、後々「心の世界」から見たより精密な解明が進められていくのであって、それについてはまたの機会にご紹介したい。

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