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横山賢二 新聞記事


【24】二つの世界観 東洋と西洋

高知新聞 2003年(平成15年)9月25日(木曜日)

 

 今日、わが国の思想的混乱を見ていると、われわれは「東洋と西洋」という二つの世界観の違いを無視したまま、不毛の議論に終始しているように見える。その二つの世界観とはどういうものか、ここで改めて検討してみたいと思う。神、人、自然の関係においてその略図を書いてみる。

 まず西洋の場合、上から神ー人ー自然の順になると思う。キリスト教の創世記でも明らかなように、神が人を支配し、人が自然を支配する。前者が一神教の母体となり、後者が自然科学の基本理念となったのではないか。

 ルネサンスを境にして、人が神に隷属する中世から、後者の人間中心、自然征服主義に移行したと考えれば納得がいく。そしてわれわれは明治以降、後者のみを進歩思想として受け入れ、今日に及んだのである。

 しかし果たして、これで本当に良いのだろうか。世界には今、多くの矛盾が噴き出している。

 一方、日本の場合は「天地人」という言葉もあるように、神ー自然ー人の順になる。人の上に自然を置くのである。この場合、人は自然を通して神を見るのだから、自然を敬い、自然に従い、自然の背後に命の本源を見る。だから西洋の物質(無生物)主義にはなり得ず、天地万物に命を認める多神教となるわけである。

 また、本来われわれがいう「人工」とは、自然にうまく従う技術のことであって、今日のように自然を力で支配する技術ではない。ここに日本の物作りの原点もある。

 二つの世界観をもとに、人類の進むべき道をじっくりと考え直したいものである。

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