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横山賢二 新聞記事


【8】若者への側頭葉教育の弊害

高知新聞 1993年(平成5年)4月26日(月曜日)

 

 先日、NHKで見ましたが、今、若い人たちの間に、以前には想像も付かなかった現象が起きているようです。

 英才教育を受け、知能や能力は人よりも優れているにもかかわらず、情緒的には非常に不安定で、社会生活にも適応できず、ひどい場合には非行や家庭内暴力にまで発展するというのです。

 一体どういうわけか、大脳生理を使って考えてみました。人の大脳の左右には側頭葉という箇所があります。一般に右脳、左脳とか呼ばれており、その機能は「記憶、計算、言語」だといわれます。

 一方、ちょうど額の裏には、前頭葉という箇所があります。その機能は「感情、意欲、理性」だといわれます。この前頭葉は人体でいえば、舌の役目をする所で、物事の意味や内容の味を知るところでもあります。

 それに対して側頭葉は意味、内容抜きの丸暗記や機械的計算を取り扱う所です。電算機に例えると、ハードウェアが側頭葉、ソフトウェアが前頭葉となります。

 ところで、今の教育は一体どちらを重視の教育でしょう。一言で言えば、生徒はとにかく人より余計 覚える、とにかく人より速く回答する。これが目標です。受験戦争に勝つためには仕方ないというのです。

 この記憶の量と回答の早さですが、これは電算機の特徴でして、これを測る指標が皆さんお好きの知能指数とというものです。が、これは「機械」の指標であって「人格」の指標ではありません。

 そうすると私たちは、教育、教育と言いながら、実は側頭葉という「機械」の性能を高めることに専念して、本来の血の通った「人格」としての前頭葉を軽視してきたことになります。

 この徹底した側頭葉教育の弊害が今、眼前の若い人たちに現れてきたのではないかと、私には思われるのです。

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