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2014.11.15up

岡潔講演録(12)


「人類自滅の危機」

【6】 大学民主化

 ああ、もう1つおもしろいのがある。このねえ、大学民主化っていうのが、どーも僕には分からん。何で分からんかっていうと、阪大で医学部の教授か部長かを選ぶ時に、看護婦が投票してる。そして民主化という以上は看護婦にも投票さすのが政治であるっちゅうてる。それがどーにも分からん。もう、これには僕本当に、これ分かりにくいですよ。

 そしたらねえ、西独へ丁度留学してる日本人があって、それが新聞へ寄稿して、やっと分かった大体、民主という言葉の意味はね、民主主義とかいうのは多数決という意味です。そんなおかしな意味だとは誰も知らん、多数決という意味です。それで西独でも、何か3つ程に別けて投票さすっていうから。

 まあ日本の場合、何か選ぶ時、投票させろと看護婦が言う。そしたら政府なら政府が、そういう事できんていう法律作るとする。そうすると看護婦は「次の総選挙というものがありますよ。私達にも1票の投票権があるんですよ」と言う。で、怖いから入れにゃしょうない。

 で、投票権を持ってるのに、大学の中で教授なんか選ぶ時、或いはいろいろそういう事に対して発言ささないということは民主主義、即ち憲法に書いてある民主主義は多数決という意味ですが、これの原則に反する そういう論法なんです。これはおかしな政治もあったもんだと、それ分かりました。

 つまり、すごんで見せたら通る。学生もそうですよ。私達も1票はあるんだ。大学を通って世の中へ出て行こうとしている時、俺達の好き勝手にさせば良いではないか。それが基本人権の1つ、それが自由というもの。ささないのだったら、次の総選挙の時、怖いぞとこうやる。それでもう、どうにも仕様ないつまり、あんな憲法を作ったのが間違いだという、あの破綻が出始めた。それで西独、どうもそうしようと思うてるらしい。で、僕はいい塩梅だと思ってる。もう非常に喜んでる。これはナースですよ。

(※解説6)

 岡にいわせれば「多数決」に頼るのは仕方のないことかも知れないが、多くの人がそれを「利己的」に使うから弊害が出る。つまり「多数決」が良い悪いということよりも、「利己的」に使うことの方に問題があるのである。

 この結果がいわゆる「衆愚政治」であって、得てしてそれに陥りやすいと岡はここで指摘しているのである。それについて別のところで岡はこうもいっている。

 「選挙なんかでも、自分の幸せのために1票を投じる権利があるといっている。何ということですか。みんなの幸せのために1票を投じる義務があるというならわかる。それなら人です。」(「真我への目覚め」より)

 我々は長い間、西洋流の「第1の心」の政治理念の影響を受けて、この論理の違いがわからなくなっているのではないだろうか。今、改憲の議論がかまびすしい「日本国憲法」でさえも、もともとはアメリカの多大な影響を受けて「第1の心」政治理念から生まれたものであるから、「改憲は当然のことである」と岡はいうに違いない。

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