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2017.07.19up

岡潔講演録(27)


「情の構造」

【12】 心の基本地図

 だいたいこれが基本の地図です。基礎的知識体系に暫くかえるもの。いろんなこと、みなわかるんですよ。例えば、どういう国をつくることが理想なのか。真情と云ったら懐かしさと喜びの世界でしょう。だから、懐かしさと喜びの世界なら、出来るだけ物質的に表現すればいい。

 また、肉体は物質だから死にますが、真の自分というものは真情だから、これは死にはしない。赤ん坊を見ればよくわかります。あらわれた時から情は出来上がってしまっています。だんだん出来ていくんじゃない。

 もう、始めから懐かしさと喜び。これを不生と云う。生じたものではない。いくら遡っても、ちゃんとあるものである。不生なるが故に不滅に決っている。こういう論法で、人は不死だと云うんですね。その不生は赤ん坊を見れば明らかですが、情は初めから出来上ってしまっている。それが自分だから、不生だから不滅と仏教は云っている。

 とすれば、今日本で普通やってるような、会社へはいって、ある地位を占めて、それに相当する月給をもらって、だんだん地位が上がって・・・。だんだん月給を余計もらってというふうな生涯を送ることは、全然時間の浪費だから、これは意味のないことです。これを繰り返すんだとしたら、こんな馬鹿なものを繰り返したって、何等得るところがない。

(※解説12)

 こうやって「真情の世界」を新たに発見し、心の世界を誰にでもわかるように整理集約してもらうと、「いろんなこと、みなわかるんですよ」と岡のいうように、全てのことが非常にわかりやすくなるのである。

 ここで、「地図」の話が出てきたのだが、たとえていえば人類は今や地図を「逆さま」に見ているようなものである。西洋のいう第1の心(自我)の世界観の方向が暖かい「南」だと誰もが思って進んでいくと、社会は対立が激化し自然の調和も次第に崩れはじめ、人類の生存自体が怪しくなってきたのだから、我々は地図を「逆さま」に見て「北」を「南」だと思い違いしていたのではないだろうか。

 岡は将来の人類の有様を見据えて、「心の構造」という全てのことに応用できる原理を発見し、それを人知れず遺してくれているのである。我々のすべきことは各人が岡の言葉をよく理解し、それぞれの分野でそれを実地に応用していかなければならないのである。

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