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2017.03.13up

岡潔講演録(25)


「情を語る」

【2】 日本以外での道徳

 さらにもっと深くみてみますと、人は人本然の情の命ずるところの通り行為しておれば決して間違ったことはしませんね。すなわちそれが道徳ですね。道徳とは人本然の情に従うことですね。かほどわかり易いのに、道徳とは何かということを世界で誰も云っていない。日本人も云っていないから、道徳とはこんなものだと云ったのは私が最初かもしれない。が、日本人なら誰でも云えたはずです。

 西洋人は道徳が全くわからない。ソクラテスは、自分は道徳とは何か知らないとはっきり云ってます。まだ知らないと云ってるのは余程知ってる方で、カントなんかは、私読んだことありませんが、実践理性批判が道徳だってなこと思ってるんでしょうが、ともかく理性批判というような言葉を使ってる。全然道徳とは何か知らない。

 道徳のことを一番詳しく長く書いたのは孔子じゃないかと思う。しかしその孔子の教えも、いろいろ細かく述べてますが、それは単に形式を述べているだけであって、内容を知ろうと思えば「仁」とは何か知らなきゃいけない。ところが孔子は「仁」とは云っていません。

(※解説2)

 日本社会は統計を取ってみると、犯罪率が諸外国に比べて格段に低いという。しかし、その原因を明快に答えたものがあるだろうか。せいぜい「日本は民度が高い」という形容で終るのが関の山である。

 しかし、岡はここでその回答を明快に与えている。「日本人は情を自分だと思っている」「道徳とは人本然の情に従うことである」と。日本は「情の国」であるから、犯罪が格段に少ないのである。なにも成熟した「法治国家」や「民主主義国家」だからではない。

 猶、ソクラテスについては講演録(16)「嬰児に学ぶ」の(4)「ソクラテスの道徳観」、カントについては講演録(1)「情と日本人」の(10)「世界を救う道」を参照。

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