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2015.11.18up

岡潔講演録(17)


「1969年の質疑応答」

【4】 都市と田舎

(岡) ともかく今、都市へ出て行きたがる奴は馬鹿です。(笑) 大体、地方に残ってます、よい日本は。何と思って都市に住みたいのかわからん。あれ、都市に住まなきゃあ労働できないという人達も出てきてることは確かです。で、こういう人達が生き甲斐を感じて生きるようにしてあげるにはどうすればよいかというところへ、識者は衆知を集めて考えなきゃいけないと思います。それくらい都市に住みながら、生き甲斐を感じて生きるということは難しいのである。また、子供を地方で育てるのは簡単ですが、都市でよく育てようと思ったらひどく難しいんです。だから、次の代を本当に担う人は、それは地方から出るでしょう。都市からはひどく出にくい。酒の肴によいようなのが都市から出るんです。(笑)

 ともかく都市で住みたいっていう奴は馬鹿です。僕の妹が片付いてる家がある。それで、こんな東京なんかで住まないで、田舎へ行って家建てなさいっていったら、都落ちするの嫌だっていって、到頭東京へ家建ててしまった。(笑) 馬鹿な奴

 教育がうまく行かんのです。もうすこーし人口を減して、農村と都市とを交流しながら、その労働力だけでやって行けるくらいにしたら、非常にうまく行くんですが、序々にでないと。今だと4割ぐらいはどーしても都市に定住しててもらわなきゃならん。

 で、まあしかし、暫定的問題で、やはり農村で暮らしながら暫くを都市で労働するという 労働力、それを使って工業するというやり方で行くのが健全です。何時までも日本民族が老いないで、若々しさを保つ所以だろうと思う。教育がさっぱりうまく行かんのです田舎で育てるように街でできるもんですか。どう工夫したってうまく行かん。この、日本の神々は日本の自然によって人を育ててますからね。それが一切使えなくなる。あれ、非常に大きいんです。

(※解説4)

 岡は明治以前の日本の都市、江戸や京都や難波の街にはそれぞれ個性というものがあったが、現代の日本の都市は千篇一律にまるで「白蟻の巣」だと酷評している。いわれてみれば私にも、真白い白蟻の巣のように見えてくる。

 そもそも岡は人口が増大することも、人口が都市へ集中することにも反対である。それはなぜかといえば、現代の大都市は西洋流の「第1の心」の価値観一辺倒になりがちで、人々は相対的で刹那的な刺激や欲望を追い求めるようになるからである。

 一方、田舎の暮しは自然に従う「第2の心」の価値観が主流で、人々は情緒の反映である人情と風情の世界に住むことになり、そもそもこうでなければ今日の物質文明の行き詰まりも打開できず、これから先何百年、何千年と安定的に永続する文明など、求めるべくもないからである。

 それはともかく、「日本の神々は日本の自然によって人を育ててる」というところに我々は今一度留意すべきではないだろうか。私は以前から確かにその実感を持っているのだが。

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