okakiyoshi-800i.jpeg
2015.06.11up

岡潔講演録(15)


「秋が来ると紅葉(もみじ)

【4】 後頭葉のアメリカ色

 東洋は何時もそうなんです。蒙古が元という国を作った、中国を征服して。が、やがて滅び去る。満州族が清という国を作った。が、やがて滅び去る。これ皆、蒙古の文化とか満州の文化とかがそれよりも高い(高いというのはどんな意味か。華やかという意味に使う)中国の文化に変わってる。後頭葉の雰囲気が違ったら念は通れない。

 で、蒙古民族の優れた念は蒙古的雰囲気。だから中国的雰囲気じゃないから退け去られる、後頭葉で。そうすると1つも民族的長所は出ない。そうすると詰まらん民族になってしもう。それで滅びたんです。満州民族、清が滅びたのも同じことです。

 東洋の国を鑑にして、今、日本はアメリカ色のために、すっかり日本民族は駄目な民族になってしまっているので、何よりもこれを一掃しなければいけないのです。一番、急務です。共産主義色なんていうのはヨーロッパですが、そちらの方にだってかなり入ってますが、こちらの方は憲法までそうして、教育までそうするという風に念入りにやってる。だから一番いけないのはアメリカ色だと思うんです。日本とアメリカとの関係は、何よりもアメリカに対して卑屈になってはならんのです。

 今、後頭葉で説明したことは、これ東洋の民族に対しては外界でもかなり説明できますよ。例えば私、本を書くでしょう。日本民族は優れた民族だっていう本を書く。なぜって、それは欠点もありますけど、なにしろ今は、日本民族というのはつまらん民族だとしかいってませんから、優れた民族だと書く。そちら要りますから、書こうとする。

 そうすると、どーしても本の色彩が日本色になる。そうするとペラペラッとページを繰って、アメリカ色でないってことわかる。そうすると本屋でちょっと見ても、また返してしまう。即ち決して読んでもらえない、とこうなる。これ、後頭葉が外界へ現れてる。これが困るそれを生理でやるんだから、余計仕方がない。なんか思いついてもヘナヘナヘナッと念がなるんでしょう、後頭葉の。日本色だったら、アメリカ色でなかったら。

(※解説4)

 東洋は概して念は後ろ回りだから、後頭葉の雰囲気が他民族のものとなると、自らの念はヘナヘナヘナと力強さを失ってしまうという岡の理論である。

 西洋は念は前回りだから歴史を繰ってみても、そのような現象は一向現れていないように見える。彼等はあくまでも自主的な自文化礼讃主義である。

 戦後の日本は盲目的なアメリカ礼讃に陥り、一億総白痴とか総骨抜きとかよくいわれたのだが、岡のこの理論はまさしくそれを裏打ちしているのではないだろうか。

 しかし、海外から次々と「クールジャパン」という波が押し寄せはじめた今日、日本人の後頭葉の雰囲気も次第に回復し、日本人の念も凜然としてきているようである。もう既にその兆候は現れはじめている。

Back    Next


岡潔講演録(15)秋が来ると紅葉(もみじ)topへ


岡潔講演録 topへ